治療紹介

2014.01.30更新

こんにちは。

忙しさを言い訳に更新が滞ったまま、ずいぶんと間が開いてしまいました。

年も変わったことですし、心機一転

今年こそはサボらずにご報告していきます。



さて。

今回は骨肉腫のワン子、メグちゃんです。

チワワさんらしく、というか、怖がりなくせに甘えん坊な女の子です。

この子、年末に初めて会ったんですが、

その年の夏から「右の後ろ足がおかしい」という事で

他院でレントゲン等調べてもらうも特に異常がなかったそうで。。

そうこうしているうちに太もものあたりがゴツゴツしてきて

あっという間に





僕が診察した12月末には

左脚の2~3倍ほどにも膨れ上がってました。

右の写真は初診時の足の様子ですが、みるからにボコボコしていて

まともに歩ける状態ではありませんでした。










これはその時のレントゲンですが、

腫瘍に侵されてしまったせいか、

大腿骨が折れて、しかも半ば吸収されてしまっているようです。


この時点で、一番に疑ったのは骨肉腫ですが

いずれにしても、性質の悪い腫瘍には違いありません。

ただ、どんどん膨らんできているようですし、

骨折もしていては、普段の生活にも支障があるため

あまり長くはないかも知れないけれど、それだけに

苦しいとか痛いとか、できるだけ最後までそんな思いをさせないための手術を決断なさいました。



  














             
上の写真は初診から約10日あまり経った頃、手術直前のものですが、

わずか2週間足らずの間にも明らかに大きくなっていて、一部は破裂してしまっていました。




手術中、

できる限り筋肉と筋肉、筋肉と骨の接合部分で剥離して

離断していってるので、ご覧の通りあまり出血は多くありません。













これは足を離断したところで

真ん中の白い部分は股関節です。

関節内を削って、関節液が出てこないように処理をしてから

周りの筋肉や脂肪を使って包み込むように閉じていきます。









術後のキズの状態ですが、これからしばらくは、

漿液が溜まったりしやすいため、

術部の管理のために3~4日入院です。










   
離断した足です。

あちこちにボコボコと、膨れ上がっているのが判ります。

この足を丸ごとホルマリン固定して、

病理の先生にみてもらいました。








返ってきた答えはやはり、骨肉腫でした。

  
腫瘍細胞は周囲脂肪組織などに浸潤増殖しており、

脈管侵襲像も確認される。

長骨内においても腫瘍細胞の増殖が認められる。

腫瘍細胞は多彩な細胞形態をとり、核の腫大・大小不同が強く、

類骨産生(*)が確認される。
  (難波動物病理検査ラボ)

  



人間でもそうですが、骨肉腫は転移性の高い悪性腫瘍のひとつです。

多くの場合、肺に転移して最終的には亡くなります。

今後は、そうした肺などへの転移を警戒しつつ、抗癌治療を施していく事になります。


犬の骨肉腫の場合、断脚だけした場合の平均生存期間は約2か月で、

1年以上生きる子はいないという報告がありますが、

手術と併用してプラチナ製剤(カルボプラチン)を使うと平均生存期間は300日程に、

4割強の子が1年以上生きるという報告があります。

うちではさらに、副作用がでにくいと言われている、低用量での段階投与を行っています。





  

すでに抜糸も済んで、

この日は1回目の抗癌治療の日でした。

お母さんによると

おうちでは元気に飛び回っているそうで

少しでも長く、元気でいてもらうために

僕もできる限りの事をしていきます。

投稿者: 博多北ハート動物病院

2013.07.02更新

こんにちは。

ずいぶんと間が開いてしまいました。

何事も貯めこんでしまうのが昔からの悪い癖なので、これからは溜めないように、

逐一報告を心がけます <(_ _)>



さて、この子の手術は春先の頃・・

確か・・・5月だったかな ^^;

ずいぶんとお年寄りの柴さんで、ミルちゃんと言います。



これは初来院の時の写真なので、よ~く見ると右耳から何か出てますね。





ご覧の通り、右の耳を塞ぐように、大きな腫瘍ができています。

はじめ、飼い主さんとの相談の結果、

もうずいぶんな年齢なのと、恐らくは耳垢腺癌など、

あまり遠隔転移しにくい腫瘍だろうとの予測があったので

このまま付け薬や飲み薬で炎症を緩和させつつ、

耳周辺の消毒をしていこうという事になってましたが

腫瘍表面から絶えず分泌される粘液のせいで

耳の中も外もベタベタで汚く、かなり臭いもキツくなってきました。

飼い主さんから再度、なんとかならないかとのご相談を受け

できる限り最短最速で、対症療法的に炎症を起こしている腫瘍部分を摘出する

事にしました。


結果



こんな感じになりました。

念のため病理検査に出してみると案の定

耳垢腺癌との事でした。

当然、取りきれるはずもなく、今後は手術した痕から再度大きくなったり、

周辺にある小さな腫瘍が巨大化しないかなど

心配の種は尽きませんが・・・

粘液が出なくなって臭いもしなくなり、本人も痒がらなくなって楽そう

と、喜んでもらえました。

こういう、根治を目指すわけではなく、

あくまで症状の緩和と

本人とご家族の生活の質(QOL:Quolity of Life)を高め、

改善させる目的での手術を姑息手術と言います。

言葉はなんだか卑屈でネガティブな印象ですが

こういった処置で本人とご家族が満足できるのであれば

それも立派な治療だと思っています。

投稿者: 博多北ハート動物病院

2013.03.11更新

こんにちは。

ホームページ上でこの陰睾のお話をさせて頂いてから

陰睾の問い合わせが増えてきました。

今回は当院で5件目の陰睾手術です。



手術を受けたのはクッキーちゃん。



ちょっとビビリが入ってますが^^;

とってもフレンドリーな2歳のダックスさんです。





術前の状態ですがご覧の通り、睾丸は立派ですがひとつしかありません。

この子は以前から、身体検査では陰睾を全く触らなかったので、

恐らくはお腹の中だろうとお話していましたが、

麻酔をかけてみると左の鼠径部にしこりがあります。

これが鼠径部のリンパ節なのかはっきりと確信できなかったので

正常な睾丸を摘出したあと、まずは鼠径部のしこりを探ってみました。

しかしやはり、リンパ節だと確認できたので、次いでお腹を開ける事になりました。



画像はお腹の中にあった睾丸です。

いつも通り、精管を辿っていこうとしたところ、

精管が左右に分岐する場所に高度な変形が観察されました。

写真の、睾丸から向かって左側、約1cmほどの太い帯状の部分が、

いびつに変形して短縮した左側の精管の全長です。



お腹の中の、精管(黒矢印)と、精管が変形している部分(白矢頭)です。

左の精管は正常なので長さは10cm以上ありますが、

変形した右の精管(陰睾側)は太く短く、全長で1cmくらいしかありませんでした。





無事に摘出された睾丸です。

大きい方が正常な睾丸で、小さい方がお腹の中にあった睾丸です。

この子はまだ3歳前と若いですが、お腹の中にあった睾丸は

まだ癌化には至ってないものの、

病理検査では、先に紹介した5歳の子の睾丸と同じく、

セルトリー細胞しか残っていませんでした。

          クッキーちゃんの、一見正常に見える腺構造


ただ、著しく変形していた精管については、ただ萎縮しているだけで

特に問題はなかったようです。







        


      

投稿者: 博多北ハート動物病院

2013.01.31更新

皮膚にできる腫瘍には様々なものがあります。

そもそも、

皮膚の表面にできているのか?

皮膚の中にできているのか?

皮膚の下にできているのか?

これだけでもずいぶんと違ってきますが、そのあたりの詳しいお話はコラムの方で

いずれお話させて頂くとして。

今回は皮膚の下にできた腫瘍です。

今回の患者さんはペコちゃんという、柴の女の子です。



写真はちょっと緊張気味ですが、とっても人懐っこいワン子です。

さて、

なにやら、頭のてっぺんにしこりができているとの事で、

しかもそれがだんだんと大きくなってきているので心配とお父さん。

触ってみるとなるほど、大きさ1.5×3.5cmほどのおおきなしこりがあります。

場所が皮下組織に乏しい頭部なので、

しこりが皮内にあるのか皮下にあるのか判りにくかったですが

試験的に注射針で穿刺してみたところ

出てきたのはなにやら垢のような汚れのような。。

なので恐らくは毛包腫もしくは毛母腫と呼ばれる、

毛根が変化した良性の腫瘍であろうと判断できました。

良性の腫瘍なのでとくに悪さはしませんが、

今回はだんだんと大きくなってきているという事で

場所もあまり皮膚にゆとりのない頭部でもあったし

今のうちに摘出する事にしました。

例えば少し切開して絞り出せばしこりはなくなりますが

この手の腫瘍は袋が残っている限り何度でも膨らみますので

可能なら袋ごと摘出が望ましいです。



さて、手術中の紹介です。



かなり大きなしこりなのが判りますね。

皮膚とは独立しているようなので、皮下の腫瘍である事が判りました。

通常の毛母腫だと、

毛根がある場所が皮内なので腫瘍も皮内にできる事が多いんですが

この腫瘍は皮下にできていました。

なので、皮内であれば皮膚ごと摘出しなければならないところを

今回は皮膚は切開のみで腫瘍を摘出する事に。




露出させた腫瘍(嚢胞)です。

今回のケースでは、皮下はおろか、一応皮膚との連絡はあったものの

写真の嚢胞本体は実は、頭皮下の筋肉のさらに下にありました。

嚢胞の先端は管状の構造を持ち、耳の脇を通って顎下まで繋がっているようでした。

なぜこうなったのかは不明ですが、





嚢胞の中身はご覧の通り

垢や毛の集まりでしたから、この腫瘍の正体が毛包腫(毛母腫)であることは

間違いなさそうです。

投稿者: 博多北ハート動物病院

2013.01.10更新

こんにちは。

さて、つい先日院長コラムでも取り上げさせて頂きましたが、

今回は「陰睾」のお話です。

コラムでも軽く触れましたが、当院での昨年一年間に発見した陰睾の子の数を改めて調べてみたところ

昨年4月から12月の間に出会ったワン子達(オス214頭)のうち21頭・・・

検出率は実に10%でした。

これは、はっきり言って異常事態です。

従来言われているワン子の陰睾発生率はおよそ1%程度ですから

10%の検出率がいかに異常なのかが判ります。


因みに

昨年のアニコムさん出典のどうぶつ白書によれば

皮膚炎などの皮膚疾患(24.4%)、

外耳炎などの耳の疾患(17.4%)、

下痢などの消化器系疾患(15.3%)

結膜炎などの眼の疾患(10.3%)と

陰睾単独で発生率上位の疾患と同程度の発生率という事になります。

しかもこれが、ある特定の犬種ではなく、チワワ・ダックス・プードル・シェルティなど・・

おおむね小型犬に限られそうではあるものの、多種多様な犬種でみられる現象である事を考えるに

当院近隣にそういった、陰睾の子も繁殖に使ってしまっている方が複数いるか

不妊処置を元々好まない方が多く住んでいて、

そこに発生した陰睾が満足な啓蒙を得られないまま根付いてしまったのか・・

原因は定かではありませんが、ともかくこの異常事態に対して

微力ながら力を尽くしていこうと思います。






さて、この写真のワン子。

サスケちゃんと言う、7歳のトイプードルさんですが

お母さんが「陰睾が心配」との事で手術をしていただける事になりました。

因みに、極度の内弁慶さんらしく、病院ではビビり屋さんです。


手術準備



麻酔をかけて、お腹の毛を刈ったところです。

白矢印の先あたり、ちょうど鼠径輪という、お腹と皮下を繋ぐ穴に精巣がひっかかっているんですが、

この段階で外から触っても全く判りませんでした。

ですが年齢が7歳と、やや高齢であることや、お腹の触診で気になる塊があった事などから

お腹の中で癌化が始まっている可能性がありました。

なのでこの子は開腹して、お腹の中を調べる事になりました。




赤線の部分を、数字の順番に切開しました。

1.まず最初に左側の、正常な睾丸を摘出します。
※正常な側は、この子本人の治療目的からすると摘出する必要はありませんが、
この病気が遺伝性である以上は万が一の繁殖を防止するためにも去勢すべきです。


2.(結果的に3の位置に見つかりましたが)体表に陰睾を認めないので、まずお腹を開けて確認する事になります。


◆開腹

お腹を開けているところです

右手でつまんでいるのは、反転させて外に出した膀胱で、その下(背中側)に精管が見えてます。

黄色で囲った部分を拡大してみると・・・



左右に伸びた精管が判ります(黒矢印)

陰睾がお腹の中にあると、この精管は外に向かわず、頭側(腎臓)へ伸びていくので、

この精管をソロソロと引っ張ると陰睾の精巣が出てきますが

この子の精管は正常に右側の鼠径輪に向かっていました。

チョンチョンと引っ張りながら、体表側からも改めて触診を進めて

ようやく赤数字3の位置の鼠径輪に精巣が引っかかっているのを突き止めました。


摘出



無影灯がまぶしくて判りにくいですが、引っかかっていた精巣を摘出するところです。

結局、サスケ君は1・2・3の3か所を全て切る事になりましたが、

無事に取り出す事ができたのと

術前は、年齢的なものと触診から、お腹の中で癌化している可能性があったので

これからの病理検査の結果次第ではありますが、

摘出してみて、肉眼的には癌化している可能性が低そうで一安心です。

もちろん、実際に病理検査の結果を見るまでは楽観はできませんが。


終わり


病理の検査結果が出次第、更新します。

投稿者: 博多北ハート動物病院

2012.08.29更新

ここでは当院にいらっしゃる子達の様々な病気と、その治療内容についてご紹介します。
(掲載にあたっては、事前にご了解を得られた症例のみご紹介します)

投稿者: 博多北ハート動物病院

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