院長からのお便り

2015.05.07更新

「犬 乳腺腫瘍」と検索してみたという人、かなりいるんじゃないでしょうか。

そして行きあたるのが

避妊手術と乳腺腫瘍の発生率なる悪魔の如き数字。。


初回発情前に手術      >> 0.5%
初回発情後に手術      >> 8%
2回目の発情後に手術    >> 26%
2.5回以上発情後の手術 >> 予防効果なし
  
ざっくりと、

「2回目の発情までに手術しないと、
 4頭に1頭は乳腺腫瘍ができますよ!」
「だから1歳の間に手術しましょう!」


というわけです。

さてこの数字、果たして本当でしょうか?

昔、ちょっと調べてみたことがあって、

それでわかったのが

それぞれの発生率というか、正しくは割合なんですが、これは本当です。

問題は、この数字(割合)の母集団で、

「乳腺腫瘍を発症した雌犬の中で」

初回発情前に手術して発症した子が0.5%
1回目の発情後に手術して発症した子が8%
2回目の発情後に手術して発症した子が26%
3回目の発情後に手術したり、手術自体をしてない子が残りの65.5%
いた。

というデータなんですね。

なので正しくは、

乳腺腫瘍を発症した子の中で
およそ4頭に1頭は2回目の発情後に手術をした子だった。


というデータなんです。

だいぶ話が違ってきますね。



では、そもそも犬全体の中で

具体的に例えば日本に住む犬全部の中で

乳腺腫瘍はどの程度発生しているのか?

というと


これは別の疫学調査データですが、

年間で10万頭のうち198頭に発生がみられるそうです。

これ、10万を198で割ると、ざっくりとですが

手術するしない全部含めて全体では、

500頭に1頭が乳腺腫瘍になる確率があるという事になります。

で、この198頭に先ほどの「割合」を当てはめてみると・・・

初回発情前に手術    0.5% > 198頭中の0.99頭
1回目の発情後に手術  8%  > 198頭中の15.84頭
2回目の発情後に手術  26% > 198頭中の51.48頭
3回目の発情後に手術
または手術してない犬   65.5%> 198頭中の129.69頭

という事になるので、これをおよその整数になおして整理すると・・・

年間の乳腺腫瘍の発生率は

初回発情前に手術    >  10万頭に約1頭
1回目の発情後に手術  >  10万頭に約16頭  > 6250頭に1頭
2回目の発情後に手術  >  10万頭に約51.5頭 > 約1940頭に1頭
3回目の発情後に手術
または手術していない犬 >  10万頭に約130頭 > 約771頭に1頭

となります。

771頭に1頭を高いとみるか低いとみるか、

これは各々の考え方・捉え方次第だと思いますが・・・

少なくとも4頭に1頭になんかなりません。  

それと、

初回発情前の避妊手術が乳腺腫瘍の発生を限りなくゼロに抑えてくれる

というのはどうやら本当みたいです。



ただし、これら疫学データはかなり古典的なデータと言えるもので

最近のペット事情にそぐわないところもあると思いますので

あくまで避妊手術を考える上での参考データのひとつ

としてお考えください。

           




投稿者: 博多北ハート動物病院

2013.05.18更新

こんにちは。

今回は予防注射について少し。

特にワン子の混合ワクチンの場合、私は必ず

「数日以内にシャンプーしていないか」

「時々、博多から出て県外などへ連れて行く事はないか」


を確認します。

これは、

シャンプーの有無については、

我々人間と違って全身を体毛に覆われているワン子(ニャン子)の場合、

程度の差はあれほぼ必ず「湯冷め」をします。

湯冷めは、体毛のために十分に水分を拭き取る事ができないため、

ドライヤー等で乾燥させる事になるのですがその時

風で水分を蒸発させる時に気化熱といって、一時的に皮膚の熱も奪っていくために体が「冷め」てしまう現象です。

一度冷えた身体を温めようとして、だいたいは翌日か、翌々日あたりに発熱がみられます。

大型犬でしかも成犬だと体力も十分ですからあまり気にしませんが

それでも人間のお子さんのように、どうかすると体調を崩す事もあります。

そこに、ワクチン接種という体に異物を入れる注射を打つ事でも多少の発熱がみられるので、

これら二つが重なると思わぬ高熱となってますます体調を崩す可能性が高くなります。

特に狂犬病予防接種のシーズンなど、年に1~2回しか病院にいらっしゃらないワン子で

汚いからと当日の朝洗ってこられる方がいますが、

泥んこでもなんでも構いませんので、絶対に洗わないようにお願いします。

ただし、体力のある大型犬でしたらあまりに暑い日などは、

熱中症対策としての水浴びは構わないかなと思います。



また、特に九州の場合、

熊本・大分・宮崎・鹿児島といった、いわゆる畜産県では

ワン子ではレプトスピラの感染の可能性があるので

打つワクチンも7種・8種・9種といった、レプトスピラの予防もできるワクチンが推奨されますが

この病気はいわば風土病的な側面をもつ病気なので、その土地に行かなければ感染しません。

加えてこのレプトスピラに対するワクチンが、発熱などの副反応も強い傾向にあります。

なので博多から出る事はなさそうなワン子の場合、このレプトスピラが入っていないワクチンをお勧めしています。

ただし、もし引っ越しその他で畜産県やざっくりと山の方へ連れて行く事になった場合には、

その2週間前には再度、改めてワクチン接種をお願いする事になります。

要は、

必要なワクチンを必要な時に打つ

という考え方です。

これは、突き詰めていけばレプトスピラ以外のワクチンに関しても、

それぞれ抗体価が下がってしまったら打つというプログラムが最適なのですが、

それをやろうとすると検査費用だけで毎年数万円かかってしまって、あまり経済的ではないため

比較的副反応が出にくいワクチンであれば、

毎年打っておいて常に抗体価を維持しておいた方が賢明であろうと言う事になります。

ただ、毎年打つワクチンだけに、接種時の体調には万全を期して

異常が起きないように計らうのが私達獣医師の務めでもあり、

飼い主様にもご協力いただきたいところでもあります。


副作用によるリスクをできるだけ軽減・回避するためには、

・ワクチンの前後3~4日間はシャンプーをしない

・どんなに忙しい方でなかなか病院に行く時間が取れないとしても、
 少しでもワン子の体調に気になるところがあれば打たない。


・できるだけ平日の午前中など来院数があまり多くない時間帯を選び
 (ワン子が待合室などで無用に興奮するのを避けるため)
 接種後万が一何か異常を発見してもすぐに病院に連絡を取って対処してもらえるようにしておく。


・接種後はまっすぐ帰宅して、ワクチンを打った上に慣れない病院で疲れているワン子を十分に休ませ、
 2~3日は安静にして何か異常がないかをよく観察する。

 午前中にワクチンを打って、その日の夜になって体調が悪いと連絡をもらう事がありますが、
 ワクチンの後ワン子を連れたまま買い物に行ったり、どこかに一緒に出かけているケースがよくあります。

ワクチンの副作用の主な原因は抗原そのものよりも
 溶液中に含まれるその他の成分に由来するものが多いという事もわかってきているので、
 もしも過去に、ワクチンで何かしら副作用が起こった経験がある子の場合は、
 ワクチンの証明書を参考にして同じメーカーのワクチンを打たない。

 (メーカーごとにワクチンの溶液が違うので、溶液由来の副作用を回避できる可能性があるため)

という事も大切だと思います。

また、ワクチンを打っていても、ウィルスには「暴露」されます。

ただ、免疫力が強化されているためにウィルスが増殖できず、「発病」しないまま身体が駆除しているだけです。

なので、ワクチンを打っていても体調不良だったり、思ったほど免疫力を確保できていなかったりすると、

暴露したウィルスの増殖を許してしまい、発病する可能性があります。

ワクチンは決してウィルスを寄せ付けないバリアーではないという事です。

投稿者: 博多北ハート動物病院

2013.01.25更新

こんにちは。

さてさて、突然ですが

猫にスルメを与えると腰が抜ける と言うような話を聞いたことはありませんか?

イカやタコ、あとはエビ・カニといった甲殻類はチアミナーゼという、チアミン(ビタミンB1)を分解する酵素を多く含んでいますが

この酵素を多量に摂取してチアミン欠乏症に陥ると、後ろ足のふらつきや麻痺が起きることがあります。

これが「腰が抜ける」と言われる症状の正体です。


でもチアミナーゼは熱に弱い性質がありますので、実は焼いてしまえば問題ありません。

なので「猫がスルメを食べると腰が抜ける?」というのは、実は間違いなんですね。

焼いたスルメのチアミナーゼのほとんどは、熱で活性を失ってますから。

ただしイカタコ類は消化に悪いですし、スルメなど干したものは水分を吸うと急激に膨らむため、

嘔吐や消化不良の原因になったりしますから与えない方が良い食材なのは変わりません。


 

投稿者: 博多北ハート動物病院

2013.01.08更新

ずいぶん前になりますが、健康な心臓のエコーのデータを集めるために、トリミングに来る健康な子達を対象に心臓のエコー検査をさせてもらった事があります。

その時、検査前の聴診などでは心臓の異常を認められない子でも、実際にエコー検査をしてみると心臓の弁膜の変性などの異常があるケースが、時々見られました。

特にワン子の場合、
心臓の雑音は、主に左心室と左心房の間の僧帽弁がきちんと閉じられていなかったりして逆流している事が多いですが、これは歳をとって弁膜が変性・変形してきちんと閉じなくなる事で起こります。

ところが、変性は起こっているものの弁と弁の隙間がなく、心臓の機能としては正常なケースが時々見られます。
(中には奇跡的に、としか言いようのないほど弁の変形が進んでいながら血液の逆流がない子もいます)

逆流がないわけですから、まだ心臓に対する負担はないか、あっても治療の必要なしと判断されるほど軽微なものが多く、言ってみれば潜在的な心臓病予備群という状況です。

ところが、こういう子がひどく興奮したり、麻酔などなんらかの重大なストレスにさらされた時、この奇跡的なタイミングで隙間なく閉じられていた弁の動きが乱れて血液の逆流が生じて、心臓病が発症してしまう事があります。

また、同じく聴診などでは異常を認めないものの、エコー検査をしてみると右側の弁(三尖弁)ですでに逆流が始まっている事があります。

右心系は左に比べると血圧が低いため、血液の流れも速くないため勢いがなく、逆流してても大きな音が立たないので気がつきにくいのです。

右心不全は咳したりという事もほとんどないのでご家族が病気の進行に気がつきにくく、散歩中に失神したり身体がむくんで来たりおなかに腹水がたまっておなかが張ってきたりと、末期になってから気がつく事もあるくらいです。

そんな子に、知らずに麻酔をかけたりすると当然、麻酔事故が起きる可能性は高くなります。

普通、特に異常がないのに心臓のエコー検査をする事は稀なので、麻酔事故やその他の突然死にはこういうケースも含まれているのではないかと思います。

心臓病に熟練している獣医師なら、初期の三尖弁閉鎖不全は判らないまでも、重度の逆流が起きていれば聴診で検出できますが、残念ながら100%ではありません。


また、
老齢のペットに対する麻酔で、心不全と併せて注意しなければいけないのが腎臓の機能低下です。

ここでのお話は、生憎と犬や猫でのデータを持ち合わせておらず、人間でのお話になりますが、腎臓の構造上同じ理屈だと思います。

まず、腎臓は加齢と共に腎臓そのものの重量が軽くなっていきます。

これは、腎臓の内容で加齢と共に失われていく部分がある事を示しています。

血液をろ過する装置である糸球体という器官は、糸球体に流れこむ細動脈という血管が狭くなったりふさがったりするために働かなくなって徐々に失われていき、糸球体の数の減少に伴って尿を濃縮したり薄めたり、老廃物を排出する能力が低下します。

しかし、年齢に伴う変化が生じても、体の要求に答えられるだけの腎機能は保たれるので、年齢とともに生じる変化は、それ自体が直接病気を引き起こすものではありません。

しかしこうした変化によって、腎臓の予備力は確実に低下します。

イメージとしては、若い時に10個の糸球体があったとして、それぞれが10%ずつ働けば全体として100%機能していたところを、加齢と共に糸球体の数が10個から5個、2個と減っていくに従って、それぞれが20%、50%分働かなくてはいけなくなるため、機能的に余裕がなくなると思っていただければ良いと思います。


また、麻酔時には心臓の拍動は緩やかになって、血圧も下がる事が多いです。
血圧低下作用の少ない麻酔薬もありますが、一般に麻酔時には程度の差はあっても血圧の低下が起こると思って良いでしょう。

さらにそれが外科手術の場合は、出血その他の侵襲刺激のために低血圧になります。

血圧が下がって、特に腎臓へ血液を運ぶ血管の血圧が下がりすぎると、下がった血圧を戻そうとして腎臓の血管が収縮するか、場合によっては閉じてしまうために、糸球体に流れ込む血液の量が減ってしまって、先にお話した、加齢と共に減っていく糸球体と同じ現象が極めて短時間で起こってしまいます。

まだ腎臓に予備力があれば、現役の糸球体ががんばる事で腎機能を維持できるのですが、この予備力が不足している場合は、失われた機能を補うことができずに腎機能低下症ー腎不全という、病的な状態になってしまいます。

通常、麻酔の前後の的確な検査・処置と術中のモニターと輸液での血圧維持でこの事態は避けられますが、老齢の場合は残念ながら必ずしも100%とは言えません。

これは、他にも原因は考えられますがその子の臓器の予備力の低下も一因になっています。



今回お話した「まだ病気ではない状態」は、麻酔に限らずどんな事がきっかけでそのバランスが破綻して病的状態になるかわからない部分があります。

獣医療では一般に、何か異常がない限りエコーやレントゲンなど専門的な検査は行われていませんが、人間ドックのように、ある程度の年齢になったらより精密な検査を受ける機会があっても良いと思います。

投稿者: 博多北ハート動物病院

2012.12.14更新

先日、あるワン子が亡くなりました。

ラムちゃんという、とても大人しくてお利口なシェルティの男の子でした。



およそ一か月前、初めて来院された時は、

主訴が下痢だった事もあって、しつこくお腹を触診して何も触らない事は確認してありましたがその時

片方の睾丸が下りてきていない事にも気がついて、

歳もとっていた子だったので下痢が治ったらどこかで陰睾の手術を・・とお勧めしたところでした。

ところがそれからおよそ一か月後、再び下痢になったとの事で来院されて

前回と同じように診察を進めていく中でお腹を触診してみると・・・

下腹部に触れた瞬間にそれと判るほどに巨大な腫瘍ができていました。

わずか、たったの一か月で、その子の状況は激変していたのです。

精巣癌の徴候のひとつでもある貧血が少し見られ始めていた事と

なにより急激な腫瘍の成長に、

もしかしたらまだ癒着など生体反応が追い付いていなければ無事に摘出できるかも知れない・・

と、お母さんとも相談して手術に踏み切りましたが、

残念ながら、腹筋にまで広範囲に転移してしまっていて、腫瘍部分には到底手を出せる状態ではありませんでした。


         上:癌化して歪に変形している睾丸
         下:お腹の中のリンパ節に転移して大きくなった癌


この子のように腫瘍が急激に巨大化するケースは、僕の経験ではそれほど多くはありません。

しかしここまで急激ではないにせよ、

ある程度の年齢(およそ4~5歳)になると腫瘍化(癌化)してしまう子はとても多いです。

陰睾が腫瘍化する確率は正常な精巣の13倍というデータもありますが、

僕がこれまで診てきた中で腫瘍化が確認できなかったのは

陰睾の手術を受けた子か、転院したり亡くなったりして確認できなくなった子だけですので、

個人的には腫瘍化率はもっと高く感じています。



博多に開業して、まだまだ少ないながらワン子の診察をしてきた中で

陰睾(潜在精巣)の子が異常に多い事に驚いています。

4月から11月までの間に来院されたワン子達、およそ400頭ほどの中に、

すでに10頭以上の陰睾の子を確認しています。

以前働いていた川崎でも年に2~3頭はいましたが、年間の延べ診療件数1万余の中の2~3頭ですので、

その確率は非常に低く、至って自然な発生の仕方だったと思います。

では何故ここではこんなに多いのか?

たまたま偏って診察していただけなのか?



陰睾は遺伝する病気なので、

これだけ発生が多いということはつまり、

陰睾の子を使って繁殖させている飼い主さんや、業者さんがいるという事と、

陰睾の子の繁殖をさせないようにとの啓蒙がいまひとつ浸透していないのでしょう。

中には、陰睾側の睾丸だけ摘出して生殖能力を残してある子もいました。



陰睾は劣性遺伝としてその家系に伝わる奇形なので、

直接陰睾だったワン子からだけでなく、その子孫から隔世遺伝を起こす可能性もありますから

今となってはもう、今いる陰睾の子から血統的に遡って原因となる家系を見つけるのは難しいでしょう。

ですが、陰睾の子をその都度手術して、その子が癌で亡くなってしまう危険を回避しつつ、

将来同じような目にあう子を減らすためにも

今からでもこの病気の子達の去勢手術をしっかりと広げていければ

いつかラムちゃんの様な不幸なワン子を減らせる日が来ると信じています。

投稿者: 博多北ハート動物病院

2012.11.15更新

昔から良く言われる言葉ですね。
ここでは人間ではなく、動物のお話。
以前「痛そう」がイタイでも似たような話をしましたが、今回はもう少し突っ込んだお話です。
ただし、きちんとした科学的検証がなされているわけではない部分もありますので、念のため。

人医学でも獣医学でも、最近の流れとしてはこれまでの西洋医学に代表される対症療法から、徐々に自然治癒力を高める東洋医学的な考え方も主流のひとつとして認識されつつあります。
西洋医学には即効性という心強い効果がある代わりに、副作用という怖い代償も付きまといます。
東洋医学では緊急性の高い病気では手遅れになる恐れがありますが、時間をかけて体質を改善することで自然本来の治ろうとする力を惹き出して治すので、副作用はありませんし、再発させないための根本治療に繋がります。
最近ではこの一長一短の治療方法を上手く組み合わせる事で、よりリスクの少ない治療方法が盛んに研究されています。

いわゆる、身体が自動的に正常な状態で平衡を保とうとする、ヤジロベイのようなしくみを恒常性(ホメオスタシス)と言いますが、自然治癒力が高まるとこのホメオスタシスの機能がより活発に働く事で、身体の不調な部分を正常に戻そうとする働きが生まれます。
自然治癒力やホメオスタシスの働き方には、その人の心の動きやストレスの程度、食生活に生活習慣などなど、様々な要因が影響しています。
特に心が落ち込んでいたり、ネガティブな状態では自然治癒力は上手く働きません。
この辺が「病は気から」と言われる所以でもあります。
「常にプラス思考」でいる事がとても大切なんですね。
さらには、思いついたことを後回しにせずその場で行動に移すという「ひらめきの行動」を心がける事も、この自然治癒力を高める働きがあります。
動物が怪我しても勝手に治るというイメージがある理由の一つは、この「ひらめきの行動」が彼らの基本的な行動パターンなので、人間よりも自然治癒力が働きやすい状態にあるからだと思います。

さて動物の場合、嬉しい時、得意になってる時、怖い時、心配してる時、拗ねてる時など、確かに心の動きがあります。
がしかし、私はそれ以上に、ワン子やニャン子が外から受ける日々のストレスに気をつけて欲しいと思ってます。
それは、例えば何か調子が悪い時は、病気そのものだったり、入院させられてたり、病院通いだったり
(獣医としてこれで良いのか・・・)
とにかく様々なストレスが、病気が治るのを妨げる要因になってしまうんですね。
病気じゃない時、普段の生活の中でもこの子達の周りにはたくさんのストレスが存在していて、この子達の体調をおかしくさせてしまう可能性があります。
それは生活環境によるものもあるでしょう。
そしてその中には、密室空間で常に受け続ける飼い主さんの心の動き、心の波動もストレスになってしまうんです。
前にも少しお話したかも知れませんが、この子達は常に、ご主人の様子に見えないアンテナを張り巡らせています。
お父さんお母さんの心の動きにとても敏感に反応します。
例えば、飼い主さんに赤ちゃんができて、そっちにかかりっきりになって、これまでの飼い主さんの意識がワン子に向かなくなった途端に色んな体調不良を起こし始めたりとか。
似たような話はいくつも聞くと思います。
そればかりじゃなく、毎晩毎晩、仕事から帰ってきては飼い主さんの愚痴を聞かされてたりとか。
飼い主さんの精神状態が落ち着いていないと、その波動=雰囲気がそのままストレスとなってこの子達にふりかかってくるわけです。
飼い主さんのネガティブな波動がそのまま、この子達になんとなく居心地が悪いと思わせてしまうのか、自然治癒力の発揮にブレーキをかけてしまうんですね。
ではどうすれば良いのか?
飼い主さん自身が、自分自身のために常に「プラス思考」でいる事、自然治癒力を高める効果があると言われている「ひらめきの行動」を心がける事が、一番だと思います。
ワン子ニャン子にとって世界で一番影響力を持つ飼い主さんが普段から「病は気から」を遠ざけて常に前向きな姿勢でいられるなら、少なくともその子が余計な病気にかかってしまう確率は、飼い主さんが落ち込んでいるよりはうんと低くなると思っています。

人もペットも「病は気から」。


そうそう。
夫婦喧嘩の耐えない家庭というのも、かなりのストレスを与えますのでご注意を。

投稿者: 博多北ハート動物病院

2012.10.27更新

こんにちは。

随分と昔の話になるんですが、私がまだ大学生だった頃。

アパートであやめというネコを1匹飼っていました。

あれは、あやめさんにとって初めての冬のある日。

外は深々と降り積もる雪で真っ白で、さすがに外には出さないようにしてましたが、

彼女はドアの前から頑として動かず私とドアと交互に見比べては「ニャー」と。

とうとう根負けして外に出してあげると、一目散に階段を駆け下りる彼女を見送って、やれやれとドアを閉めたその直後です。

外で「ニャー(ただいま)」と、あやめさんが鳴いているじゃありませんか。

ドアを開けると一目散に部屋の中へ駆け込む彼女を尻目に「えらい短い散歩だなぁ」

いったいどこまで行ったんだろうと階段を下りてみると、

階段が終わって雪が積もっている所に彼女の足跡がたった一つだけポツンと。

以降あやめさんは、雪が降る日は一日中、つまらなさそうに窓の外を眺めていました。

ネコの足の裏はとっても敏感で、冷たいものに触れるのは特に嫌がるようですね。

だからなのか、雨の日にはあまり野良猫の姿を見ませんね。

まぁ、ネコじゃなくとも雨の日に好き好んで出歩く人は少ないですけど。


あやめさんの最初の子供達が、まだ里親にもらわれていく前。

岬・渚・小太郎・茶太郎のやんちゃ4匹は、それはもう元気一杯でした。

ある日の夜、もう遅いし明かりを消して床について少しした頃でした。

なにやらコーナーボードの上のテレビのあたりからパチパチ、パチパチと微かな物音がするんです。

なんだろう?と月明かりに目を凝らしてみると、やんちゃ4匹が並んでテレビに手をかけてるんです。

で、静電気がパチパチ、と。

そのうち静電気がなくなると、今度はボードに上がってテレビの横からパチパチ。

そこも済ませると最後はテレビの上からパチパチ。

みんな静電気の感触が気に入ったらしく、それからも寝る時になるとしょっちゅうやってました。

それ以外にも、玉取りをして遊んだり何かを手繰り寄せてみたり、なるほどネコの前足は手なんだなぁと感心したものです。

いや、それだけなんですけどね。

投稿者: 博多北ハート動物病院

2012.10.05更新

こんにちは。

今回の話は、先行して掲載してました「イヌときどきネコ」からの転載です。

アチラでの記事のうち、豆知識的なものは随時、こちらに移植していきます。



さて。。

開業してまだ半年ですが。

おかげさまで、たくさんのワン子ニャン子(たまにうさぎ)に会えました。

まぁ、こんな風貌ですから、けっこう怖がられたりしちゃうんですが^^;

みなさん、まだ初めましての子ばかりなので、最初に体中触らせてもらってますが

まぁ、かなりの子達の歯に歯石が付着してますね。

ある程度臭ってきてたり、厚く付着してる場合など、

ワクチン接種で来院されたのでなければちょちょっと歯石を落としたりしてます。

ただし、スケーラーという歯科用の特殊な刃物を使うので暴れると危ないため、

おとなしく歯をいじらせてくれる子に限りますが。

また、このスケーラーで歯石を落とすとき、どうしても細かいキズがついてしまうので

ある程度歯石がカッチリついてきてからやらせてもらってます。

歯槽膿漏や酷い歯周病があると、ヒトと同じように知覚過敏にもなりますので、

そんな歯に金属のスケーラーを当てるとビリビリっと。

嫌~な痛みが走ります。

なのでそういう歯になってしまったら、麻酔をかけての歯石除去をお勧めしてます。



ところで、ワン子やニャン子の歯って、隙間だらけで、しかもとがってるでしょう?

ヒトとワン子・ニャン子では歯の構造も口の構造も、食性も違います。

これは、肉食動物に特有の歯の構造で、獲物の肉や骨を噛み裂いたり噛み砕いたりするのに

適した構造になってるんですね。

飲み込める大きさに噛み裂いたら、あとはゴックンと丸飲みしてしまいます。

ワン子は肉食に近い雑食で、ニャン子は完全な肉食です。

なので、ドライフードなど、元から小さいものは噛まずに丸呑みしちゃうわけなんですね。

人間の場合はよく「良く噛んで食べなさい」なんて言われますが、

これは、人間の場合は唾液も重要な消化液として作用するからなわけですが、

ワン子やニャン子の場合はさほど重要ではなさそうです。

だいいち、人間なら口を閉じたまま噛む事ができますが、

肉食動物は唇の機能が発達しておらず、口を閉じたまま噛むことができません。

ワン子やニャン子も、良く噛もうとしたらボロボロ食べ物をこぼしてしまいます。

そしてさらに、元々が食べ物の消化はほとんど胃や腸でのみ行っているので、

我々人間のように「良く噛んで食べないと消化に悪い」なんて事もないわけです。

そして、最近のフードはどれも優秀ですしね。

ところが、ほとんどの人が知らず知らずのうちに自分の「人間としての」習慣になぞらえて、

イヌやネコも良く噛んで食べなきゃと思っちゃうみたいですね。

例えば老齢のネコの場合、歯が全部抜け落ちてしまったとしても、

人間なら固いドライフードは噛めないから食べ辛いところでしょうが、

彼らは丸呑みするわけですから関係ないわけです。

それよりも、柔らかい缶詰などを良くほぐさずに与えられたほうが、

飲み込める大きさに噛み裂く事もできずに食べるのに難儀してしまうでしょう。

ただし、胃の消化液は主にたんぱく質を消化するための成分なので、

本来の肉食から大きくかけ離れて、野菜中心になると上手く消化できなくなります。

特に生野菜はそれこそ「よく噛んで」食べないとほとんど消化できないので

野菜を混ぜて与える場合は基本的には十分に熱を通して、

さらに細かく切って与えるようにしましょう。

ペースト状にして与えるとなお良いですが、キャベツの芯の部分など

食感が好きな子も多いので、ウンチがやわらかくなり過ぎない程度に調整しましょう

投稿者: 博多北ハート動物病院

2012.09.24更新

こんにちは。
僕のコラム第一回目をお届けします。
できるだけ、パートナーであるワン子ニャン子との日々の生活の中で気を付ける事など、少しはお役にたちそうな情報を提供していければと思ってます。
まぁ、不定期更新ではありますが、外部ブログ「イヌときどきネコ」と併せて、よろしくお願いします。


さてさて、
ワン子やニャン子が注射される時って、なんだか痛そうですよね。

注射する時に飼い主さんが傍にいらっしゃると、ほとんどの方が僅かに眉間に皺を寄せて「あぁ痛そう」って。

例えば予防接種の時って最初から病院に来る目的は「注射」なわけです。

家を出るときから飼い主さんの頭には「注射」の二文字が浮かんでるわけですね。

病院へいく途中の車の中とか、病院が近付くにつれて段々と緊張してきたりして。

受付で手続きを済ませて待合室で待ってる間にも、さらに緊張が高まってきて、

名前を呼ばれた時はそれがもうMAXになっちゃうんでしょうね。

ただでさえ動物病院って特別なところで、何かなければ行かない人がほとんどですし、

何かある時って、それはとても不安な時ですし。


以前勤めていた病院の院長先生は、動物は飼い主さんの心の動きにとても敏感だとおっしゃってました。

ご主人が悲しい時、なんだかわからないけどそういう波動が伝わってきてとっても心配してしまうんだとか。

逆に怒ってる時、触らぬ神に祟りなしとばかりにちょっと余所余所しくしてみたり。

特にマンション型の密室空間で暮らすワン子・ニャン子にとっては、

飼い主さんの感情その他の影響ってとても大きいんだと、私も思います。

常にこの子達のアンテナは飼い主さんに向けられてるんですね。

だからもう、病院の待合室で半ばパニックになってる飼い主さんの波動をモロに受け止めてるワンちゃんとか、

診察室に入った時からすでにパニックなわけです。

いくら看護婦さんや獣医さんが「大丈夫だよ、怖くないよ」なんて言ったって、

そりゃ、怖いと思ってる人からそう言われても、ねぇ(; ̄ー ̄A

唯一の頼みの綱の飼い主さんまで緊張しまくってるわけですから、診察台の上のワンちゃんはもう大変なわけです。

そこで、飼い主さんにはその子の頭なんかを撫でてもらいながら、思いっきり顔を近づけてもらって、

その子の目を見ながら話しかけてもらうんです。

もちろん、その前の問診というか、診察室に入った時から色々なお話をしながら、

診察の前に必ず一度は笑ってもらうように心がけてますけど。(漫才とかはやりませんよ、念のため)

笑うって良いですね。とてもリラックスできるんです。

そしてその心の動きは、必ず動物にも伝わるんですよ。

そして注射器とかそういう物を見せないようにしながらワクチンの用意をします。

飼い主さんがリラックスしててワン子に一生懸命話しかけて、頭を撫でながら我が子の自慢話のひとつも話していると、

いつの間にか注射も終わってるんです。

所謂、保定だとかそういうのは全くいらないんです。

飼い主さんもワン子も、ほとんどは注射した事すらわからないままワクチンは終わってしまいます。

飼い主さんの「痛そう」がなければ、実際には痛くないんですよね。注射って。

もちろん、すでにパニックも極まっていて、病院では修正不可能な状態になっちゃってる子もいますけどね。

だからというわけではありませんが、なるべく、大した用事はないけどちょっと寄ってみた。

という具合に、どんどん病院に遊びに来て欲しいですね。

また、そういう事ができる病院が増えてくれるといいなぁと思います。

普段から通いなれた所なら、飼い主さんもペットもそれほど緊張しないで済みますし、

なにより「ここにくると毎回何か嫌な事される」という風には覚えられたくないじゃないですか。

投稿者: 博多北ハート動物病院

2012.08.09更新

ここでは、動物を飼う上で注意しておきたい事やちょっとしたお役立ち情報などを
コラム形式でご紹介していきます。
よろしくお願いします。

投稿者: 博多北ハート動物病院

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