さて、少し前のお話。
1月末頃の事ですが、吉吉(よしきち)ちゃんというダックスが喉を血まみれにしてやってきました。

唾液腺嚢胞という、喉に粘液が溜まった袋をこしらえてしまう病気の子で
これまでは余所の病院で定期的に抜いてもらっていたそうですが、
なんらかの原因で嚢胞が細菌感染を起こして化膿していました。
写真では、漏れ出てくる漿液や膿汁の対処のために包帯を巻いてあります。
唾液腺は、耳下腺・下顎腺・舌下腺・頬骨腺の4対から成り立っていて
この唾液腺嚢胞という病気はほとんどが下顎腺からの異常分泌が原因で
起こります。
なので治療としては、根治を目指すならこの下顎腺の摘出手術となりますが
程度によっては溜まってきたら針で吸引するという温存療法を選択される
方もいます。
今回この吉吉(よしきち)ちゃんは温存療法を選択されていたようですが
その嚢胞がいつの間にか化膿して、弾けてしまったため
当院を受診されました。

これは術前の患部の様子です。
来院時には化膿と炎症で厚く腫れあがっていた周辺組織が落ち着いてきたのと
唾液の分泌がなおも続いていて患部に溢れるため衛生が保てないので
治療開始から3日目で手術に踏み切りました。

場所が場所だけに、
頚動静脈や各神経など、細かい血管にも注意しながら
化膿した嚢胞ごと摘出して縫合して、手術終了です。
化膿してなければもう少し、周辺の組織も判別しやすかったのでしょうが
非常に集中力を要する手術でした。
術後の経過はすこぶる順調で、すでに抜糸も終わってますが
摘出していない唾液腺(耳下腺)付近に少し腫れが見られたため
術後の下顎リンパ節の腫脹を考えて抗生物質を与えてもらってます。
ですが、もしかしたら、
珍しいですが耳下腺側からの分泌異常もあるのかも知れません。
そうだとすると、
腫れの程度によっては将来、残りの唾液腺の摘出も
検討しないといけないかも知れません。