治療紹介

2016.03.11更新

今回は、どこの動物病院でも最も多く執刀されている不妊手術のご紹介です。

至ってベーシックな手術でもあり、

わざわざとりあげてご紹介している動物病院はあまりないかも知れません。

なので、わが子の手術を希望したものの、果たしてどんな手術なのか

不安に思う人もいらっしゃるかも知れませんね。

ベーシックな手術ではあるものの、複数の術式があり、

細かい部分まで指摘すると千差万別。

あくまで当院での術式について、ご紹介しますので、ご参考まで。



さて、今回は猫の避妊手術です。



麻酔して、手術の用意が整ったところですね。




皮膚を切皮したところですが、赤丸の部分を拡大します



猫の皮膚はとてもしなやかでよく伸びるため

この程度の切皮でも十分に手術が可能です。

もちろん、多少のテクニックと経験は必要です。



腹筋を切開して、まず術者からみて向こう側、左の卵巣を露出させます。

この子はすでに発情が来ていたので卵巣が大きくなり、

子宮角も少し太くなってます。

卵巣の下側で、卵巣堤索や血管と一緒に結紮して切り離します。



左右の卵巣を切り離した後、子宮体部で結紮して

子宮を切除します。

この時子宮を残さないように、できるだけ子宮頸管に近い部分で

結紮を心がけます。



腹筋をアレルギー反応を起こしにくいタイプの吸収糸で縫合します。

さらに、同じく吸収糸で皮内縫合を施して



終了です。

5mm程度の切皮でも猫の皮膚はよく伸びるため

最終的にはおよそ1cmくらいの傷になります。

これくらい小さい傷になると、万が一舐めてもほとんど開くことはありませんし

そもそも傷を気にする子が少ないので

当院ではよほど神経質な子じゃない限りはカラー等お出ししてません。

もちろん、ご希望があればお出しする用意はあります。

投稿者: 博多北ハート動物病院

2013.03.11更新

こんにちは。

ホームページ上でこの陰睾のお話をさせて頂いてから

陰睾の問い合わせが増えてきました。

今回は当院で5件目の陰睾手術です。



手術を受けたのはクッキーちゃん。



ちょっとビビリが入ってますが^^;

とってもフレンドリーな2歳のダックスさんです。





術前の状態ですがご覧の通り、睾丸は立派ですがひとつしかありません。

この子は以前から、身体検査では陰睾を全く触らなかったので、

恐らくはお腹の中だろうとお話していましたが、

麻酔をかけてみると左の鼠径部にしこりがあります。

これが鼠径部のリンパ節なのかはっきりと確信できなかったので

正常な睾丸を摘出したあと、まずは鼠径部のしこりを探ってみました。

しかしやはり、リンパ節だと確認できたので、次いでお腹を開ける事になりました。



画像はお腹の中にあった睾丸です。

いつも通り、精管を辿っていこうとしたところ、

精管が左右に分岐する場所に高度な変形が観察されました。

写真の、睾丸から向かって左側、約1cmほどの太い帯状の部分が、

いびつに変形して短縮した左側の精管の全長です。



お腹の中の、精管(黒矢印)と、精管が変形している部分(白矢頭)です。

左の精管は正常なので長さは10cm以上ありますが、

変形した右の精管(陰睾側)は太く短く、全長で1cmくらいしかありませんでした。





無事に摘出された睾丸です。

大きい方が正常な睾丸で、小さい方がお腹の中にあった睾丸です。

この子はまだ3歳前と若いですが、お腹の中にあった睾丸は

まだ癌化には至ってないものの、

病理検査では、先に紹介した5歳の子の睾丸と同じく、

セルトリー細胞しか残っていませんでした。

          クッキーちゃんの、一見正常に見える腺構造


ただ、著しく変形していた精管については、ただ萎縮しているだけで

特に問題はなかったようです。







        


      

投稿者: 博多北ハート動物病院

2013.01.10更新

こんにちは。

さて、つい先日院長コラムでも取り上げさせて頂きましたが、

今回は「陰睾」のお話です。

コラムでも軽く触れましたが、当院での昨年一年間に発見した陰睾の子の数を改めて調べてみたところ

昨年4月から12月の間に出会ったワン子達(オス214頭)のうち21頭・・・

検出率は実に10%でした。

これは、はっきり言って異常事態です。

従来言われているワン子の陰睾発生率はおよそ1%程度ですから

10%の検出率がいかに異常なのかが判ります。


因みに

昨年のアニコムさん出典のどうぶつ白書によれば

皮膚炎などの皮膚疾患(24.4%)、

外耳炎などの耳の疾患(17.4%)、

下痢などの消化器系疾患(15.3%)

結膜炎などの眼の疾患(10.3%)と

陰睾単独で発生率上位の疾患と同程度の発生率という事になります。

しかもこれが、ある特定の犬種ではなく、チワワ・ダックス・プードル・シェルティなど・・

おおむね小型犬に限られそうではあるものの、多種多様な犬種でみられる現象である事を考えるに

当院近隣にそういった、陰睾の子も繁殖に使ってしまっている方が複数いるか

不妊処置を元々好まない方が多く住んでいて、

そこに発生した陰睾が満足な啓蒙を得られないまま根付いてしまったのか・・

原因は定かではありませんが、ともかくこの異常事態に対して

微力ながら力を尽くしていこうと思います。






さて、この写真のワン子。

サスケちゃんと言う、7歳のトイプードルさんですが

お母さんが「陰睾が心配」との事で手術をしていただける事になりました。

因みに、極度の内弁慶さんらしく、病院ではビビり屋さんです。


手術準備



麻酔をかけて、お腹の毛を刈ったところです。

白矢印の先あたり、ちょうど鼠径輪という、お腹と皮下を繋ぐ穴に精巣がひっかかっているんですが、

この段階で外から触っても全く判りませんでした。

ですが年齢が7歳と、やや高齢であることや、お腹の触診で気になる塊があった事などから

お腹の中で癌化が始まっている可能性がありました。

なのでこの子は開腹して、お腹の中を調べる事になりました。




赤線の部分を、数字の順番に切開しました。

1.まず最初に左側の、正常な睾丸を摘出します。
※正常な側は、この子本人の治療目的からすると摘出する必要はありませんが、
この病気が遺伝性である以上は万が一の繁殖を防止するためにも去勢すべきです。


2.(結果的に3の位置に見つかりましたが)体表に陰睾を認めないので、まずお腹を開けて確認する事になります。


◆開腹

お腹を開けているところです

右手でつまんでいるのは、反転させて外に出した膀胱で、その下(背中側)に精管が見えてます。

黄色で囲った部分を拡大してみると・・・



左右に伸びた精管が判ります(黒矢印)

陰睾がお腹の中にあると、この精管は外に向かわず、頭側(腎臓)へ伸びていくので、

この精管をソロソロと引っ張ると陰睾の精巣が出てきますが

この子の精管は正常に右側の鼠径輪に向かっていました。

チョンチョンと引っ張りながら、体表側からも改めて触診を進めて

ようやく赤数字3の位置の鼠径輪に精巣が引っかかっているのを突き止めました。


摘出



無影灯がまぶしくて判りにくいですが、引っかかっていた精巣を摘出するところです。

結局、サスケ君は1・2・3の3か所を全て切る事になりましたが、

無事に取り出す事ができたのと

術前は、年齢的なものと触診から、お腹の中で癌化している可能性があったので

これからの病理検査の結果次第ではありますが、

摘出してみて、肉眼的には癌化している可能性が低そうで一安心です。

もちろん、実際に病理検査の結果を見るまでは楽観はできませんが。


終わり


病理の検査結果が出次第、更新します。

投稿者: 博多北ハート動物病院

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