皮膚にできる腫瘍には様々なものがあります。
そもそも、
皮膚の表面にできているのか?
皮膚の中にできているのか?
皮膚の下にできているのか?
これだけでもずいぶんと違ってきますが、そのあたりの詳しいお話はコラムの方で
いずれお話させて頂くとして。
今回は皮膚の下にできた腫瘍です。
今回の患者さんはペコちゃんという、柴の女の子です。
写真はちょっと緊張気味ですが、とっても人懐っこいワン子です。
さて、
なにやら、頭のてっぺんにしこりができているとの事で、
しかもそれがだんだんと大きくなってきているので心配とお父さん。
触ってみるとなるほど、大きさ1.5×3.5cmほどのおおきなしこりがあります。
場所が皮下組織に乏しい頭部なので、
しこりが皮内にあるのか皮下にあるのか判りにくかったですが
試験的に注射針で穿刺してみたところ
出てきたのはなにやら垢のような汚れのような。。
なので恐らくは毛包腫もしくは毛母腫と呼ばれる、
毛根が変化した良性の腫瘍であろうと判断できました。
良性の腫瘍なのでとくに悪さはしませんが、
今回はだんだんと大きくなってきているという事で
場所もあまり皮膚にゆとりのない頭部でもあったし
今のうちに摘出する事にしました。
例えば少し切開して絞り出せばしこりはなくなりますが
この手の腫瘍は袋が残っている限り何度でも膨らみますので
可能なら袋ごと摘出が望ましいです。
さて、手術中の紹介です。
かなり大きなしこりなのが判りますね。
皮膚とは独立しているようなので、皮下の腫瘍である事が判りました。
通常の毛母腫だと、
毛根がある場所が皮内なので腫瘍も皮内にできる事が多いんですが
この腫瘍は皮下にできていました。
なので、皮内であれば皮膚ごと摘出しなければならないところを
今回は皮膚は切開のみで腫瘍を摘出する事に。
露出させた腫瘍(嚢胞)です。
今回のケースでは、皮下はおろか、一応皮膚との連絡はあったものの
写真の嚢胞本体は実は、頭皮下の筋肉のさらに下にありました。
嚢胞の先端は管状の構造を持ち、耳の脇を通って顎下まで繋がっているようでした。
なぜこうなったのかは不明ですが、
嚢胞の中身はご覧の通り
垢や毛の集まりでしたから、この腫瘍の正体が毛包腫(毛母腫)であることは
間違いなさそうです。
2013.01.31更新
皮下の腫瘍
投稿者:
2013.01.10更新
陰睾手術1
こんにちは。
さて、つい先日院長コラムでも取り上げさせて頂きましたが、
今回は「陰睾」のお話です。
コラムでも軽く触れましたが、当院での昨年一年間に発見した陰睾の子の数を改めて調べてみたところ
昨年4月から12月の間に出会ったワン子達(オス214頭)のうち21頭・・・
検出率は実に10%でした。
これは、はっきり言って異常事態です。
従来言われているワン子の陰睾発生率はおよそ1%程度ですから
10%の検出率がいかに異常なのかが判ります。
因みに
昨年のアニコムさん出典のどうぶつ白書によれば
皮膚炎などの皮膚疾患(24.4%)、
外耳炎などの耳の疾患(17.4%)、
下痢などの消化器系疾患(15.3%)
結膜炎などの眼の疾患(10.3%)と
陰睾単独で発生率上位の疾患と同程度の発生率という事になります。
しかもこれが、ある特定の犬種ではなく、チワワ・ダックス・プードル・シェルティなど・・
おおむね小型犬に限られそうではあるものの、多種多様な犬種でみられる現象である事を考えるに
当院近隣にそういった、陰睾の子も繁殖に使ってしまっている方が複数いるか
不妊処置を元々好まない方が多く住んでいて、
そこに発生した陰睾が満足な啓蒙を得られないまま根付いてしまったのか・・
原因は定かではありませんが、ともかくこの異常事態に対して
微力ながら力を尽くしていこうと思います。
さて、この写真のワン子。
サスケちゃんと言う、7歳のトイプードルさんですが
お母さんが「陰睾が心配」との事で手術をしていただける事になりました。
因みに、極度の内弁慶さんらしく、病院ではビビり屋さんです。
◆手術準備
麻酔をかけて、お腹の毛を刈ったところです。
白矢印の先あたり、ちょうど鼠径輪という、お腹と皮下を繋ぐ穴に精巣がひっかかっているんですが、
この段階で外から触っても全く判りませんでした。
ですが年齢が7歳と、やや高齢であることや、お腹の触診で気になる塊があった事などから
お腹の中で癌化が始まっている可能性がありました。
なのでこの子は開腹して、お腹の中を調べる事になりました。
赤線の部分を、数字の順番に切開しました。
1.まず最初に左側の、正常な睾丸を摘出します。
※正常な側は、この子本人の治療目的からすると摘出する必要はありませんが、
この病気が遺伝性である以上は万が一の繁殖を防止するためにも去勢すべきです。
2.(結果的に3の位置に見つかりましたが)体表に陰睾を認めないので、まずお腹を開けて確認する事になります。
◆開腹
お腹を開けているところです
右手でつまんでいるのは、反転させて外に出した膀胱で、その下(背中側)に精管が見えてます。
黄色で囲った部分を拡大してみると・・・
左右に伸びた精管が判ります(黒矢印)
陰睾がお腹の中にあると、この精管は外に向かわず、頭側(腎臓)へ伸びていくので、
この精管をソロソロと引っ張ると陰睾の精巣が出てきますが
この子の精管は正常に右側の鼠径輪に向かっていました。
チョンチョンと引っ張りながら、体表側からも改めて触診を進めて
ようやく赤数字3の位置の鼠径輪に精巣が引っかかっているのを突き止めました。
◆摘出
無影灯がまぶしくて判りにくいですが、引っかかっていた精巣を摘出するところです。
結局、サスケ君は1・2・3の3か所を全て切る事になりましたが、
無事に取り出す事ができたのと
術前は、年齢的なものと触診から、お腹の中で癌化している可能性があったので
これからの病理検査の結果次第ではありますが、
摘出してみて、肉眼的には癌化している可能性が低そうで一安心です。
もちろん、実際に病理検査の結果を見るまでは楽観はできませんが。
◆終わり
病理の検査結果が出次第、更新します。
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