院長からのお便り

2013.05.18更新

こんにちは。

今回は予防注射について少し。

特にワン子の混合ワクチンの場合、私は必ず

「数日以内にシャンプーしていないか」

「時々、博多から出て県外などへ連れて行く事はないか」


を確認します。

これは、

シャンプーの有無については、

我々人間と違って全身を体毛に覆われているワン子(ニャン子)の場合、

程度の差はあれほぼ必ず「湯冷め」をします。

湯冷めは、体毛のために十分に水分を拭き取る事ができないため、

ドライヤー等で乾燥させる事になるのですがその時

風で水分を蒸発させる時に気化熱といって、一時的に皮膚の熱も奪っていくために体が「冷め」てしまう現象です。

一度冷えた身体を温めようとして、だいたいは翌日か、翌々日あたりに発熱がみられます。

大型犬でしかも成犬だと体力も十分ですからあまり気にしませんが

それでも人間のお子さんのように、どうかすると体調を崩す事もあります。

そこに、ワクチン接種という体に異物を入れる注射を打つ事でも多少の発熱がみられるので、

これら二つが重なると思わぬ高熱となってますます体調を崩す可能性が高くなります。

特に狂犬病予防接種のシーズンなど、年に1~2回しか病院にいらっしゃらないワン子で

汚いからと当日の朝洗ってこられる方がいますが、

泥んこでもなんでも構いませんので、絶対に洗わないようにお願いします。

ただし、体力のある大型犬でしたらあまりに暑い日などは、

熱中症対策としての水浴びは構わないかなと思います。



また、特に九州の場合、

熊本・大分・宮崎・鹿児島といった、いわゆる畜産県では

ワン子ではレプトスピラの感染の可能性があるので

打つワクチンも7種・8種・9種といった、レプトスピラの予防もできるワクチンが推奨されますが

この病気はいわば風土病的な側面をもつ病気なので、その土地に行かなければ感染しません。

加えてこのレプトスピラに対するワクチンが、発熱などの副反応も強い傾向にあります。

なので博多から出る事はなさそうなワン子の場合、このレプトスピラが入っていないワクチンをお勧めしています。

ただし、もし引っ越しその他で畜産県やざっくりと山の方へ連れて行く事になった場合には、

その2週間前には再度、改めてワクチン接種をお願いする事になります。

要は、

必要なワクチンを必要な時に打つ

という考え方です。

これは、突き詰めていけばレプトスピラ以外のワクチンに関しても、

それぞれ抗体価が下がってしまったら打つというプログラムが最適なのですが、

それをやろうとすると検査費用だけで毎年数万円かかってしまって、あまり経済的ではないため

比較的副反応が出にくいワクチンであれば、

毎年打っておいて常に抗体価を維持しておいた方が賢明であろうと言う事になります。

ただ、毎年打つワクチンだけに、接種時の体調には万全を期して

異常が起きないように計らうのが私達獣医師の務めでもあり、

飼い主様にもご協力いただきたいところでもあります。


副作用によるリスクをできるだけ軽減・回避するためには、

・ワクチンの前後3~4日間はシャンプーをしない

・どんなに忙しい方でなかなか病院に行く時間が取れないとしても、
 少しでもワン子の体調に気になるところがあれば打たない。


・できるだけ平日の午前中など来院数があまり多くない時間帯を選び
 (ワン子が待合室などで無用に興奮するのを避けるため)
 接種後万が一何か異常を発見してもすぐに病院に連絡を取って対処してもらえるようにしておく。


・接種後はまっすぐ帰宅して、ワクチンを打った上に慣れない病院で疲れているワン子を十分に休ませ、
 2~3日は安静にして何か異常がないかをよく観察する。

 午前中にワクチンを打って、その日の夜になって体調が悪いと連絡をもらう事がありますが、
 ワクチンの後ワン子を連れたまま買い物に行ったり、どこかに一緒に出かけているケースがよくあります。

ワクチンの副作用の主な原因は抗原そのものよりも
 溶液中に含まれるその他の成分に由来するものが多いという事もわかってきているので、
 もしも過去に、ワクチンで何かしら副作用が起こった経験がある子の場合は、
 ワクチンの証明書を参考にして同じメーカーのワクチンを打たない。

 (メーカーごとにワクチンの溶液が違うので、溶液由来の副作用を回避できる可能性があるため)

という事も大切だと思います。

また、ワクチンを打っていても、ウィルスには「暴露」されます。

ただ、免疫力が強化されているためにウィルスが増殖できず、「発病」しないまま身体が駆除しているだけです。

なので、ワクチンを打っていても体調不良だったり、思ったほど免疫力を確保できていなかったりすると、

暴露したウィルスの増殖を許してしまい、発病する可能性があります。

ワクチンは決してウィルスを寄せ付けないバリアーではないという事です。

投稿者: 博多北ハート動物病院

  • 院長からのお便り
  • STAFF BLOG
  • 治療紹介